子どものやる気を引き出す声かけ|10の場面別に言葉と関わり方を紹介

同じ「そろそろ始めようか」という声かけでも、すっと動き出す日もあれば、なかなか始められない日もあります。

疲れていたり、何から始めればよいか迷っていたり。そのときの子どもの様子によって、助けになる言葉も変わります。

この記事では、家庭でよくある10の場面を取り上げ、子どもの様子に合わせた声かけを紹介します。言葉が出ないときの待ち方や、年齢に合わせた伝え方も一緒に考えていきましょう。

子どもの様子に合わせた10の声かけ場面

子どもに声をかける前に大切にしたいこと

子どもがなかなか動かないと、「何と言えばやる気になる?」と考えたくなりますよね。夕食の支度や出かける時間が迫っていれば、なおさらです。

でも、同じように手が止まっていても、疲れている日と、何から始めればよいか分からない日では、必要な助けが違います。

まずは、表情や声の調子を見ながら、「この子はいま、どんな感じかな」と目を向けてみましょう。少し休みたいのか、最初だけ手伝ってほしいのか。その様子に合わせて、かける言葉を考えていきます。

ここからは、家庭でよくある10の場面に分けて、声かけの例を紹介します。

子どものやる気が出ない背景を詳しく知りたい方は、「子どものやる気が出ない6つの理由|原因別に親ができること」も参考にしてください。

始める前の子どもへの声かけ

1.疲れている、気持ちが追いついていないとき

学校から帰ってきたばかりでぼんやりしている。遊びから気持ちを切り替えられない。そんなときは、行動を促す前に、心や体の状態を見てみます。

「疲れているように見えるけど、どうかな」
「少し休もうか。お水を飲む?」

「疲れていない」と返ってきたら、決めつけずに「そっか」と受け取ります。言葉にするのが難しそうなら、水分や軽食を用意したり、少し静かに過ごしたりするほうが合う日もあります。

休んだあとにすることが決まっているなら、「ひと休みしたら、何からやるか一緒に考えようか」と相談する方法もあります。このあと何をするかが分かることで、動きやすくなる子もいます。

2.なかなか始められないとき

やることは分かっているのに、机の前で別のものを触っている。こんな場面では、「早くしなさい」と言う代わりに、止まっているところへ関心を向けます。

「何か困ってる?」
「始めるところ、一緒に考える?」

「別に」「分からない」と返ってきたら、「そっか。最初だけ一緒にすることもできるよ」と伝えてみます。

急いでいる場面では、動かせない予定を短く伝えます。「あと10分で出発するよ。上着を着るの、手伝おうか?」のように、必要なことと手伝えることを分けると伝わりやすくなります。

3.何から始めればよいか分からないとき

「宿題をする」「部屋を片づける」には、いくつもの手順が含まれています。子どもはやる気がないのではなく、最初の一歩が見えていないのかもしれません。

「まず連絡帳を一緒に開いてみる?」
「床のブロックと絵本、どちらから片づける?」
「最初だけ一緒にする? 一人でやってみる?」

選ぶのが難しそうなときは、選択肢を二つほどに絞る方法もあります。どちらを選んでも受け入れられるものにしておくことも大切です。

選択肢を出しても迷う日は、「今日はブロックから一緒にやってみる?」と大人から一案を出す方法もあります。

子どもの考えや見方を尊重し、年齢に合った選択の余地をつくる関わりは、学習面や心理面の適応と関連することが報告されています。※3 また、選択肢を持てることが、課題への興味や取り組みを支える場合があることも、実験研究をまとめた分析で示されています。※4 選択肢は、「自分はどうしたい?」を一緒に考えるための一つの方法です。

自信が揺れている子どもへの声かけ

4.「できない」と言っているとき

「できない」と聞くと、「やってみないと分からないよ」「あなたならできるよ」と励ましたくなりますよね。でも子どもは、難しさや不安を分かってほしくて言っているのかもしれません。

「難しそうに感じているのかな」
「一緒に見てみる?」

まずは「できない」という言葉を打ち消さず、その奥に何があるのかを決めつけずに確かめます。話せそうなら、「どこが難しそう?」と一つだけ聞いてみます。答えにくそうなら、問題を一緒に見る、見本を示すなど、言葉以外の支えへ移ります。

「全部できる」と約束しなくても、「さっき、ここまでは考えられたね」「分からないところを見つけられたね」と、見えた事実を伝えられます。自信を持たせようと説得するより、「どこならできそうか」を一緒に探してみてください。

5.挑戦しようか迷っているとき

初めての習い事。少し難しい遊具。みんなの前での発表。やってみたい気持ちと、心配な気持ちが同時にあることもあります。

「やってみたい気持ちもあるのかな?」
「見てから決める? 一緒に近くまで行ってみる?」

大人から見れば小さな挑戦でも、子どもにとっての大きさは違います。「絶対できるよ」と背中を押すより、見るだけ、途中まで、今日はしない、という選択も残し、どこまでなら試せそうかを一緒に考えます。

取り組んでいる途中の子どもへの声かけ

6.途中で手が止まった、諦めそうなとき

せっかく始めたのだから、最後まで続けてほしい。そう思う場面もあります。それでも、手が止まった理由によっては、少し休むことや方法を変えることが次の一歩になります。

「どこで止まった?」
「少し休む? それとも一緒に見てみる?」

選べないようなら、「ここまで一緒に見てみようか」と具体的に助けます。子どもに考える余裕が戻ってきたら、「ここからはどうしたい?」と、本人の考えをもう一度確かめます。

続けることだけでなく、分からないと言う、助けを求める、休んで戻ることも大切な力です。言葉だけではなく、課題を小さくする、見本を見せる、そばで一緒に手を動かすなどの関わりも役立ちます。詳しくは「子どものやる気を引き出す5つの方法」で紹介しています。

できたことや工夫に気づいたときの声かけ

7.少しできたとき

子どもが少し進めたとき、「できたね!」「すごいね!」とうれしさを一緒に表すのは素敵なことです。そこに、見えたことを具体的に添えてみます。

「さっきより、ここまで進んだね」
「分からないところを、自分から聞けたね」
「休んでから、もう一度戻ってきたんだね」

「何をしたか」「何が変わったか」を具体的に伝えると、子ども自身も「ここまでできた」「このやり方がよかった」と、自分の取り組みに目を向けやすくなります。「すごいね!」という喜びに、「見ていたよ」という気持ちも添えるイメージです。

できた量や頑張った時間だけでなく、自分から質問したことや、やり方を変えたことにも、その子なりの工夫があります。そんなところも、一緒に喜べるとよいですね。

8.最後までできたとき

やり終えた子どもとは、素直に一緒に喜びたいですね。

「できたね!」
「最後までやったね!」

まずは、やり終えた喜びを一緒に味わいます。子どもが話せそうなら、そのあとで「自分ではどうだった?」と聞いてみてもよいでしょう。終えた直後は疲れていて、振り返る気分ではないこともあります。そのときは、質問を添えなくても十分です。

9.自分なりの方法や工夫を考えたとき

机ではなくリビングで始めた。難しい問題を飛ばして、分かるところから進めた。ブロックが倒れないよう、土台を広くしていた。やるべきことだけでなく、好きな遊びに夢中になっているときにも、その子なりの工夫が見えます。

「途中でやり方を変えていたね」
「その方法、やってみてどうだった?」

こうした問いは、子どもが自分の工夫を振り返り、言葉にしてみるきっかけになることがあります。ただ、答えを求められているように感じる子もいます。話したくなさそうなら、見えたことだけを伝え、振り返りはまた別の機会にしてもよいでしょう。

取り組んだことを一緒に喜び、ハイタッチする親子

失敗して落ち込んでいる子どもへの声かけ

10.うまくいかず、悔しさや悲しさがあるとき

失敗した子を見ると、「大丈夫」「次はできるよ」「いい経験になったね」と元気づけたくなるものです。でも、悔しさの中にいるときは、次の方法より先に、いまの気持ちを分かってほしいことがあります。

「悔しかったのかな」
「そばにいるね」

気持ちが少し落ち着いてから、「話したい?」「一緒に考える? 今日はここまでにする?」と聞いてみます。すぐに再挑戦させなくても大丈夫です。悲しさや悔しさが残っていても、子ども自身が「話したい」「次を考えたい」と思うことはあります。気持ちを消そうとせず、子どもの様子や言葉を確かめながら、次を考えられそうなときに声をかけます。

子どもが「分からない」「話したくない」と言うとき

質問しても「分からない」としか言わない。黙り込む。「話したくない」と言う。そんな反応もあります。

「分からない」は、考えていないという意味とは限りません。まだ言葉になっていなかったり、疲れていて考える余裕がなかったり、大人が求めている答えを探していたりすることもあります。

「今は分からないんだね」
「話したくなったら聞かせてね」
「言葉にしなくても大丈夫。最初だけ一緒にする?」

同じ質問を重ねず、少し待ってみます。話す以外にも、指さす、書く、二つから選ぶ、あとで話すといった方法があります。

待つことは、放っておくことではありません。困ったときに声をかけられるよう、そばで見守ります。困り方が大きくなってきたら、具体的に手を貸すこともできます。

年齢やそのときの状態に合わせて声かけを変える

同じ年齢でも、言葉で考えやすい子もいれば、実物を見たり一緒に動いたりすると分かりやすい子もいます。ここでの年齢は一つの目安です。年齢が上がっても、疲れている日や不安が強いときには、短い言葉や具体物、一緒に始める支えが合うことがあります。

幼児期の目安|短い言葉と具体的な選択肢

「どうしたい?」と広く聞くより、「ブロックと絵本、どっちからにする?」と実物を示すと選びやすくなります。長い説明を続けず、必要なら大人も一緒に手を動かします。

小学校低学年頃の目安|手順や見通しも見える形に

「まず何をする?」「何時まで休む?」と、始め方や予定を一緒に確認します。リストや時計など、目で見えるものを使う方法もあります。

小学校高学年頃の目安|方法や手助けを一緒に相談する

「どんなやり方なら進めやすそう?」「何を手伝ってほしい?」と、本人が考える余地を広げます。親と違う案が出たときも、すぐに良し悪しを決めず、「そう考えたんだね」と受け取ります。子どもが話せそうなら、「どんなところがやりやすそう?」と聞いてみてもよいでしょう。

子どものやる気を支えるために避けたい言い方

励ましたり、参考になると思って伝えたりした言葉も、子どもには「比べられた」「気持ちを分かってもらえなかった」と聞こえることがあります。いつもの声かけを、子どもの側から少し見てみましょう。

  • ほかの子を引き合いに出す
    「お姉ちゃんはこうしているよ」。参考に伝えたつもりでも、「自分も同じようにしなきゃ」「お姉ちゃんのほうがいいんだ」と受け取られることがあります。
  • そのときの姿で、子ども自身を決めつける
    「また後回し?」「いつも続かないね」。繰り返し言われるうちに、「自分はそういう子なんだ」と感じてしまうこともあります。
  • 自分で決めたことを理由に、困っている気持ちを聞かない
    「自分でやるって決めたよね」。約束を確認するつもりでも、「大変でも、助けてと言ってはいけないんだ」と感じることがあります。
  • 質問の形で、大人の望む答えを求める
    「いつやるの?」と聞いても、「あとで」という返事は受け入れられない。そうすると、子どもは自分の考えを聞かれているとは感じにくいものです。
  • 励まそうとして、気持ちの切り替えを急ぐ
    「大丈夫、次はできるよ」。元気づけたい一言でも、子どもはまだ「悔しかったね」と受け止めてほしいところかもしれません。

言葉を選ぶときに大切にしたいのは、目の前のその子が何に困り、どう感じているかです。「どこが難しい?」「どうしたかった?」と耳を傾けることが、その子に合う手助けを考えるきっかけになります。

忙しさや焦りから、強く言ってしまう日もあります。そんなときは、「さっきは強く言ってごめんね」と伝え、あらためて子どもの話を聞くところから始めてみてもよいですね。

結果を一緒に喜び、取り組む過程にも目を向ける

「できた!」「100点だった!」。子どもがうれしそうに報告してくれたら、「やったね!」「うれしいね!」と、まずは一緒に喜びたいですね。

そして、褒めたり、頑張りを認めたりするときには、そこまでの過程にも目を向けてみます。

「分からない問題を、自分で調べていたね」
「難しいところ、自分から聞きに行っていたね」
「途中で休んで、また戻ってきたね」

特別な工夫を探す必要はありません。試していたこと、助けを求めたこと、もう一度取りかかったこと。実際に見ていた姿を言葉にすることで、「そこまでのあなたも見ていたよ」という気持ちを届けられます。

取り組む過程に目を向けることは、次の挑戦のヒントにもなります。「分からないところを聞いたら、先に進めたね」と具体的に伝えると、子ども自身が何が役に立ったのかを振り返るきっかけになります。「次に困ったときも、聞いてみよう」と、自分に合ったやり方を次にも生かしていけるとよいですね。

思うような結果にならなかったときにも、その子が取り組んできた過程は残っています。悔しい気持ちを受け止めながら、そこにも目を向けていたいですね。

まとめ|声かけは、子どもの様子を見るところから

子どものやる気を支える声かけに、一つの決まった正解があるわけではありません。まず、その子がいまどんな状態で、何に困っていそうかを見てみます。

始め方が分からないなら、最初の一歩を一緒に見つける。不安があるなら、気持ちを受け取る。少しできたら、見えた工夫を具体的に伝える。答えられない日は、待つ、休む、一緒にやることも選べます。

毎回、すべてを丁寧にできなくても大丈夫です。今日ひとつだけ、「この子はいま、どんな感じかな」と見てみる。そこから、その子と今の場面に合う言葉を探していけたらよいですね。

子どものやる気について、関わり方や考え方の全体像から知りたい方は、「子どものやる気を引き出すには?自分から動けるようになる親の関わり方と声かけ」もご覧ください。

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子どもは、話しているうちに、「自分はこんなふうに感じていたんだ」「本当はこうしたかったんだ」と、自分の気持ちや考えに気づくことがあります。好きなことを夢中で話す時間も、自分の言葉を見つけていく大切な時間です。

けれど、毎日の生活の中で、子どもの話をいつでもゆっくり聞くのは簡単ではありません。家事や仕事に追われる日もありますし、親子だからこそ、先に答えやアドバイスが浮かぶこともあります。

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よくある質問

子どもに何を聞いても「分からない」と言うときは、どうすればよいですか?

まだ気持ちが言葉になっていないのかもしれません。何度も理由を聞くより、「今は分からないんだね」と受け取り、答えを求めずに少し待ってみましょう。困って動けない様子やつらさが強いときは、話せるまで待ち続けなくても大丈夫です。指さす、書く、二つから選ぶ、最初だけ一緒にするなど、話す以外の方法も選べます。

声をかけても動かないのは、言い方が悪いのでしょうか?

言い方だけが理由とは限りません。疲れ、難しさ、不安、先の見えにくさなど、いくつかのことが重なっている場合もあります。「動かなかった」だけで声かけを失敗とせず、どこに手助けが必要かを一緒に探してみてください。

「すごいね」「頑張ったね」と褒めてはいけませんか?

「すごいね!」と、一緒に喜ぶ気持ちを伝えて大丈夫です。そのうえで、「途中でやり方を変えていたね」など、具体的な行動や工夫も伝えてみます。

選択肢を出しても、どちらも嫌だと言うときは?

今の気分に合わなかったり、選ぶ余裕がなかったりするのかもしれません。時間に余裕があり、子どもが考えられそうなら、「ほかにやりやすい方法はある?」と聞いてみます。決める余裕がなさそうなら、「今日は最初だけ一緒にする?」と大人が一案を出してもよいでしょう。

急いでいるときも、子どもが決めるまで待つべきですか?

出発時刻や安全に関わることは、大人が決め、短く具体的に伝えます。時間に余裕があれば、「靴下と上着、どちらから着る?」と選べる部分を残す方法もあります。急ぐ日は、「あと10分で出発するよ。上着を着るの、手伝おうか?」と必要な支えを示してもよいでしょう。

声をかけても始められないとき、どこまで手伝ってよいですか?

最初の一歩を示す、一緒に始める、見本を見せるなど、そのとき必要な分だけ手伝います。「もう少し一緒にする?」と聞きながら、手助けの量を調整してみてください。必要な助けを求められることも大切な力です。

子どもの年齢によって、声かけはどう変えればよいですか?

幼い子には、短い言葉や実物を使い、選択肢を二つほどに絞る方法があります。年齢が上がったら、方法や必要な手助けを本人と相談します。年齢だけでなく、その日の疲れ具合や言葉で考えやすいかどうかにも合わせてみてください。

本記事で参考にした資料

※1 Henderlong, J., & Lepper, M. R. “The Effects of Praise on Children’s Intrinsic Motivation: A Review and Synthesis.” Psychological Bulletin, 128(5), 774–795(2002年)https://doi.org/10.1037/0033-2909.128.5.774

※2 Mueller, C. M., & Dweck, C. S. “Praise for Intelligence Can Undermine Children’s Motivation and Performance.” Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52(1998年)https://doi.org/10.1037/0022-3514.75.1.33

※3 Vasquez, A. C., Patall, E. A., Fong, C. J., Corrigan, A. S., & Pine, L. “Parent Autonomy Support, Academic Achievement, and Psychosocial Functioning: A Meta-analysis of Research.” Educational Psychology Review, 28, 605–644(2016年)https://doi.org/10.1007/s10648-015-9329-z

※4 Patall, E. A., Cooper, H., & Robinson, J. C. “The Effects of Choice on Intrinsic Motivation and Related Outcomes: A Meta-Analysis of Research Findings.” Psychological Bulletin, 134(2), 270–300(2008年)https://doi.org/10.1037/0033-2909.134.2.270

大塚 浩美

日本親子コーチング協会 認定コーチ。  子ども向けオンラインコーチングサービス「キッズメイト」を運営し、子どもが安心して自分の気持ちを話せる「おはなしの時間」を提供している。  自身の娘が専門のコーチとの対話を通じて前向きに変化した経験から、自身もコーチ認定を取得。  親としての実体験とコーチングの両面から、自己肯定感・自己効力感を育む支援に取り組んでいる。  子どもが失敗を恐れず一歩踏み出せること、そして親が安心して見守れる関係を、多くの家庭に届けることを目指している。

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