「ねえ、今日ね!」
学校であったことや、好きなゲームの話。楽しそうに話す姿を見て、「この子はどんなところに面白さを感じているんだろう」と思うことはありませんか。
子どものやる気を考えるとき、何を教えるか、どう励ますかに迷うことがあります。そんなときに目を向けたいのが、大人が「聴くこと」と、子ども自身が「話すこと」です。
話を聴くと、その子が感じていることを知る手がかりになります。そして話している本人にも、自分の気持ちや考えが見えてくることがあります。
この記事では、その二つの意味と、家庭の会話で大切にできることを紹介します。
この記事で紹介すること
- 子どもの話を聴くことと、本人を理解することの関係
- 話しながら気持ちや考えを振り返った、キッズメイトの対話事例
- 日常の中にある「子どもが話す時間」の大切にし方
子どものやる気を考えるとき、まず話を聴いてみる
子どもの気持ちや考えは、外から見ただけでは分からない
机に向かっているのに、なかなか手が動かない。練習の時間になっても、支度を始めない。
そんな姿を見ると、「今日はやる気がないのかな」と気になりますよね。時間が迫っていれば、声をかけたくなるのも自然なことです。
ただ、そのとき子どもが何を感じているかは、姿だけでは分かりません。最初の問題で迷っているのかもしれないし、今日の練習について気になることがあるのかもしれません。
そこで、まず本人の話を聴いてみる。「どうした?」と声をかけ、返ってきた言葉に耳を傾けます。
話を聴くことは、その子の側から今の状況を知る入口になります。何に困っているのかが少し分かれば、必要な手助けも考えやすくなります。
大人が考える「動けない理由」と、本人が感じていることは違うことがある
例えば、宿題を前に手が止まっている子に、「難しいのかな」と思って声をかけたとします。すると、「学校でやったやり方を思い出していた」という返事があるかもしれません。
これは家庭でありそうな一例ですが、同じ「手が止まっている姿」にも、いろいろな背景があります。本人の言葉を聴いて初めて、「今は考えているところだったんだ」と分かることもあるでしょう。
もちろん、本人もすぐに説明できるとは限りません。言葉が出てこないときは、表情や様子も見ながら、一緒に確かめていけます。
厚生労働省の保護者向け資料でも、子どもの心が気になるときには、決めつけずに本人の話を聴くことが勧められています。参考1
「この子は今、何を感じているんだろう」。その関心から始めてみると、目の前の姿の見え方が変わることがあります。
聴いてもらい、自分が話す時間にはどんな意味がある?
話しながら、自分の気持ちや考えを捉える
話す時間には、聴いている大人が子どもを知ることに加えて、もう一つの意味があります。話している子ども自身も、自分が感じたことや考えていたことに目を向けられるのです。
大人にも、誰かに出来事を話しているうちに、「ああ、私はここが気になっていたんだ」と思う瞬間がありますよね。
子どもも、最初から気持ちをきれいにまとめて話すわけではありません。思い出した順に話したり、途中で言い直したりしながら、自分に合う言葉を探していきます。
言葉になる前から、その子には感じていることや考えていることがあります。話すことは、それを本人が捉える一つの方法です。
「何が気になっていたのか」が言葉になることもある
例えば、「今日の遊び、つまらなかった」と話し始めた子がいるとします。
何をして遊んだのか、どんなことがあったのかを話すうちに、「本当は、自分の考えたルールでも遊んでみたかった」と言葉になることもあるでしょう。
最初は「つまらなかった」の一言だった気持ちに、もう少し具体的な形が見えてきます。「何が起きたか」と「自分はどう感じたか」を行き来する中で、気になっていたことを捉え直す。そんな話す時間もあります。
このような会話の例で大切にしたいのは、どんな返事が出てくるかに関心を持つこと。話が途中で終わっても、そこまでに出てきた言葉を受け止められます。
好きなことを話す時間にも、その子の見方が表れる
振り返る話題は、困った出来事だけではありません。
ゲームで工夫したこと。何度も描いているキャラクター。友達と笑ったこと。好きな話をしているときにも、「ここが面白い」「こんなふうにしたかった」という、その子ならではの見方が表れます。
「好き」の中身を話すうちに、自分がどこに夢中になっているのかに気づくこともあります。一緒に面白がってくれる人がいれば、続きを話したくなる日もあるでしょう。
何気ないおしゃべりにも、自分の感じ方や考えを言葉にする場面があるのです。
話して振り返ることで、体験の意味に気づくこともある
楽しかったこと。できるようになったこと。誰かに喜んでもらったこと。悔しかったこと。毎日の中には、そのまま過ぎていく出来事もたくさんあります。
その出来事を誰かに話すと、自分が何をしたのか、何が起きたのか、そのとき何を感じたのかを、改めて振り返る時間になります。
「できた」という出来事も、話して振り返ることで、「何度も試してできたことがうれしかった」「誰かに喜んでもらえたことがうれしかった」など、その子にとって何が心に残ったのかが見えてくることがあります。
こうして話して振り返ることで、「自分にとって、これはこんな経験だった」と、その体験の意味が少しずつ見えてくることがあります。これからどうするかを決めなくても、すでに経験したことを自分なりに受け止める時間にも、価値があるのです。
自分の気持ちや考えが、「やってみよう」につながることもある
「私はこう思う」「これが好き」「こうしたい」が見えてくることがある
「自分で考えて動けるようになってほしい」。そんな願いの土台には、本人が何を感じ、何を望んでいるかがあります。
「これが好き」「ここは手伝ってほしい」「今度はこうしてみたい」。話す中で見えてきた思いは、次に何を選ぶかを考える手がかりになります。
本人の思いを知り、必要な情報や手助けも添えながら、その子なりの選択を支えていくことが大切です。
キッズメイトが大切にする、話す時間の広がり
キッズメイトでは、思う存分話す時間に、次のような広がりがあると考えています。
- 話して、一緒に笑ったり喜んだりする。
- 気持ちや考えに気づく。体験を振り返る。
- 「私はこう思う」「これが好き」「これがうれしかった」と、自分の思いが少しずつ見えてくる。
そうした時間の中で、ときには「こうしたい」「やってみよう」という思いが生まれることもあります。
キッズメイトがその土台として大切にしているのは、自分の話に関心を向けてもらい、うれしさや悔しさを一緒に味わってもらうことです。
「話して楽しかった」「自分の気持ちに気づいた」「あの出来事が自分にとってうれしい経験だったと分かった」。その時間自体を大切にしています。すべての対話を、行動や挑戦へ導くことを目的にはしていません。

キャプテンの経験を話し、「うれしかった」を振り返った場面
スポーツチームでキャプテンをしている子との、キッズメイトのセッションでの出来事です。
コーチは、普段キャプテンとしてどんなことをしているのか、どんなキャプテンでありたいのかについて話を聴いていきました。
すると本人から、メンバーが動きやすいように声をかけていることや、相手チームの動きに気づいたら仲間に伝えていることが、少しずつ出てきました。
その声かけをしたときに何があったのかをさらに聴くと、仲間から、自分では気づけないことを教えてもらえて助かる、とお礼を言われたエピソードを話してくれました。
コーチが「そのとき、どんな気持ちだった?」と尋ねると、本人は「すごいうれしかった」と答えました。
ここで語られた行動も、仲間とのやり取りも、本人がすでに経験していたことです。
セッションでは、自分がどんな声をかけ、そのあと仲間から何を言われ、どう感じたのかを話しました。自分がしたことと、そのときの気持ちを結びつけて振り返り、「すごいうれしかった」と言葉にしたのです。
すでに起きた出来事について話し、自分が何をして、どう感じたのかを改めて振り返る。そうすることで、自分にとってどんな経験だったのか、自分は何を大事にしたいのかを捉え直すことがあります。
これからどうするかを考えるだけでなく、すでに経験したことに自分なりの意味を見つけていくこと。その時間にも、話すことの一つの価値があると、キッズメイトでは考えています。
家庭で「子どもが話す時間」をどうつくる?
好きなことを話し始めたら、一緒に面白がる
家庭でも、子どもが「ねえ、見て」「聞いて」と近づいてくる場面があります。
そんなとき、手を止められそうなら、少し一緒に楽しんでみませんか。「そんなことができたんだ」「そこ、面白いね」。詳しく知らない話でも、子どもが楽しんでいるところに関心を向けられます。
夕飯の支度や仕事などで、今は聴けないこともありますよね。「あとで見せて」と伝えて、落ち着いたときにこちらから声をかける方法もあります。
日常にある短いやり取りからで十分です。毎日、特別な対話の時間を用意する必要はありません。
見せに来たものや描いた絵も、会話の入口になる
話し始めるきっかけは、言葉だけではありません。
できあがった工作を持ってくる。描いた絵をそっと置く。遊んでいる画面を見せる。そこから始まるやり取りもあります。
「ここ、こんな形にしたんだね」と、目に留まったところを伝えると、本人が続きを話すこともあるでしょう。うなずいたり、一緒に眺めたりしているだけの時間も楽しめます。
説明の上手さより、今、何を一緒に見てほしいのかに目を向けてみてください。

必要なときには教える、一緒に考える・手伝う
話を聴いてみると、やり方が分からなくて困っていたと分かることもあります。そんなときは、教えたり、一緒に試したりすることが助けになります。
本人が知りたいことに答えながら、「ここは一緒にやってみる?」と相談してもよいでしょう。聴いて分かったことを、今のその子に合う支えにつなげていけます。
具体的な支え方は家庭でできる5つの関わり方、言葉の例は場面に合わせた声かけでも紹介しています。
話したくない日も、すぐには動かない日もある
話すタイミングや、答えが出るまでの時間を急がない
話しかけても「別に」と返ってくる日。途中まで話したあと、「もういい」となる日。大人と同じように、子どもにも今は話したくないときがあります。
そんな日は、「話したくなったら聞くよ」と伝えるなど、いったん会話を終えてもよいでしょう。
話している途中の沈黙も、すぐに次の質問で埋めなくて大丈夫。考えているのか、言葉を探しているのか、少し間を置いて様子を見られます。
楽しく話したあとも、何かが決まらないことはあります。一緒に笑えたこと、気持ちを伝えられたことにも目を向けたいですね。
待つ・休む・一緒にする、その日に必要な支えを選ぶ
「やってみたい」と言っても、すぐに始められないことがあります。疲れているのかもしれないし、最初の一歩が難しいのかもしれません。
少し休む、一緒に取りかかる、困っているところを教えてもらう。本人の気持ちやその日の様子に合わせて、支え方を一緒に考えていけます。気持ちを聴けたあとも、生活や行動への具体的な手助けは大切です。
眠れない、食欲が落ちた、好きだったことも楽しめないなど、いつもと違う様子やつらさが続くときは、学校や医療機関などへの相談も考えてください。参考2
やる気が出ないように見える背景については、原因別の関わり方にまとめています。
まとめ|子どもの言葉と、その子なりの一歩を大切に
大人が聴くことで、子どもの感じていることを知る。子ども自身も、話しながら自分の気持ちや考えに目を向けたり、経験したことを振り返ったりする。その中で、「これが好き」「うれしかった」「こうしたい」と、自分の思いが少しずつ見えてくることがあります。
まずは今日、子どもが話しかけてきたときに、少し続きを聴いてみるところから。その子が面白がっていることを、一緒に楽しめたらいいですね。
関連記事:子どものやる気を支える関わり方の全体像
思う存分話せる、キッズメイトの「おはなしの時間」
キッズメイトは、子どもがコーチとオンラインで対話する「おはなしの時間」を届けています。

コーチは、その子の話に100%の関心を向けるミカタです。好きなことを一緒に面白がり、うれしかったことを一緒に喜び、悔しいときには一緒に悔しがります。
思う存分話しながら、自分の気持ちに気づいたり、経験したことを振り返ったり、「私はこう思う」「これが好き」と自分の思いを言葉にしたりする。そんな時間そのものを大切にしています。そして、「こうしたい」「やってみよう」という気持ちが生まれたときには、コーチがミカタとしてその一歩を応援します。
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よくある質問
ゲームや好きなものの話ばかりでもよいですか?
好きな話にも、本人の興味や工夫、感じ方が表れます。何に夢中なのかを一緒に楽しんでみてください。好きなことの話を、そのまま一緒に楽しむ時間も大切です。
うまく言葉にできないときは、どう受け止めればよいですか?
言葉を探す時間を待ちながら、絵や身振り、見せたいものも受け止めてみてください。「こういうことかな」と確かめるときは、違っていたら本人が直せるようにします。言葉の量や説明の上手さだけでは、その子が考えていることは測れません。
何分くらい話を聴けばよいですか?
長く話すことを目標にしなくても大丈夫です。大切にしたいのは、子どもが「自分の話を聴いてもらえた」と感じられること。短いやり取りでも、子どもが伝えたいことに関心を向け、一緒に楽しんだり、そのときの気持ちを受け止めたりする時間を大切にしてみてください。
親がアドバイスしたり、答えを教えたりしてもよいですか?
親が知っていることや、経験してきたことを共有するのも、大切な支えです。まずは子どもの気持ちや考えを聴き、「こんな方法もあるよ」と一つの考えとして伝えてみてください。親の答えだけが正解と決めつけず、子どもがどう受け止め、どう考えるかにも耳を傾けながら、一緒に考えていけるとよいですね。
参考文献
- 厚生労働省「まず話を聞いてみる」『こころもメンテしよう ~ご家族・教職員の皆さんへ~』。心の不調が気になる子どもへの関わりを扱う資料です。一般的な会話やキッズメイトの効果を測定したものではありません。
- 厚生労働省「子どものSOSサイン」『こころもメンテしよう ~ご家族・教職員の皆さんへ~』。