「子どもの気持ちを尊重したい。でも、いつまでも待っているわけにもいかない」
「自分で決めてほしいけれど、どこまで任せればよいのだろう」
子どものやる気を大切にしたいと思うほど、声をかけるべきか、手伝うべきか、それとも待つべきか、迷うことがありますよね。
この記事では、子どもが「やってみよう」と思えるように親ができる5つの方法を、家庭での具体例とともに紹介します。
子どものやる気を引き出すために親ができる5つの方法

子どもが動かない姿を見ると、「やる気がないのかな」と心配になることがあります。でも、その姿の奥には、疲れや戸惑い、不安など、その子なりの理由が隠れているかもしれません。
大切なのは、すぐに動かすための正解を探すことより、「この子はいま、どんな感じなのだろう」と見てみること。そこから、今の子どもに合う関わり方を一緒に探していきましょう。
1.動かす前に、今の状態や気持ちを確かめる
宿題を前にして、なかなか手が動かない。そんなとき、つい「早く始めよう」「まずこれをやって」と言いたくなりますよね。
けれど、同じように動いていなくても、子どもの中で起きていることはさまざまです。疲れていて切り替えられないのかもしれません。何から始めればよいか分からないのかもしれません。失敗したくない、やる意味が分からない、と感じていることもあります。
まずは表情や様子を見て、こんなふうに聞いてみるのも一つです。
「今、どんな感じ?」
「何か引っかかっている?」
「疲れているようにも見えるけど、どうかな」
すぐに答えが返ってこない日もあります。「分からない」「今は話したくない」という反応も、そのときの子どもの状態を知る手がかりです。そんなときは、「話したくなったら聞かせてね」と、少し待ってみてもよいでしょう。
時間が決まっている場面なら、話せるまでずっと待たなくても大丈夫です。「今は話さなくて大丈夫。最初に何を一緒にすると進めやすそう?」と、必要な手助けへ移ることもできます。
話しているうちに、「少し休んでからやる」「最初だけ手伝ってほしい」と、自分なりの答えが見えてくる子もいます。疲れや空腹が強そうなときは、質問より先に、休憩や食事を届けるほうがよい日もあります。
動き出しにくさの背景をもう少し詳しく知りたい方は、「子どものやる気が出ない6つの理由|原因別に親ができること」も参考にしてください。
2.子どもが自分で決められる余地をつくる
生活の中には、大人が決めることもたくさんあります。それでも、順番や場所、始め方など、子どもが選べる部分は意外と見つかります。
例えば、宿題をすることは決まっていても、
- 算数と国語のどちらから始めるか
- 机とリビングのどちらでするか
- 一人で始めるか、最初だけ一緒にするか
は、本人に聞くことができます。
「どうしたい?」と広く聞かれると、かえって迷ってしまう子もいます。幼い子や疲れている子には、二つほどの選択肢があると選びやすくなります。少し大きな子なら、「ほかにやりやすい方法はある?」と一緒に考えてもよいでしょう。
選択肢は、どちらを選んでも大人が受け入れられるものにしておくのがコツです。今すぐ始める必要があるなら、「今やる? あとでやる?」より、「算数と国語、どちらから始める?」のほうが、親子ともに迷いが少なくなります。
それでも決められない日もあります。選択肢を一つ減らしたり、「今日はこっちからにしてみる?」と親が提案したりしてもかまいません。子どもの反応を見ながら、その日に合う形を探してみてください。
年齢に合った意味のある選択肢は、自分で決めた感覚や、取り組もうとする気持ちを支えることが研究でも示されています。(※1・2)選んだあとに「難しかったら変えてもいいよ」「手伝ってほしくなったら教えてね」と伝えておくと、子どもも選びやすくなります。
3.最初の一歩を具体的にし、必要な分だけ手伝う
「宿題をする」「部屋を片づける」という言葉の中には、いくつもの行動が入っています。やることは分かっていても、どこから手をつけるか迷っているのかもしれません。
そんなときは、最初の一歩を小さく、分かりやすくしてみます。
- 「宿題をしよう」ではなく「まず連絡帳を開いてみよう」
- 「部屋を片づけよう」ではなく「床のブロックを箱に入れよう」
- 「明日の準備をしよう」ではなく「時間割を一緒に見よう」
「1問だけ」「5分だけ」と区切ることで、始めやすくなる子もいます。
一人では難しそうなら、
「最初だけ一緒にする?」
「やり方を見せようか?」
「そばにいたほうがやりやすい?」
と聞いてみます。
手伝うことは、子どもの代わりに全部してしまうこととは違います。一緒に始めたあと、「ここからは一人でできそう?」「もう少し一緒にする?」と確かめながら、手助けの量を変えていけばよいのです。
忙しいときには、大人が進めたほうが早い日もあります。そんな日も、「ここは自分でやる? 一緒にやる?」と、本人ができそうな部分を一つ残せると、子どもが考えたり試したりする機会になります。
課題を小さく区切り、近い目標を置くことは、子どもの「できそう」という感覚や関心を支えることが研究されています。※3 うまく始められない日には、小さくするだけでなく、難しさや疲れ、不安も見ながら支え方を変えてみましょう。
4.結果だけで判断せず、過程や工夫にも関心を向ける
テストでよい点を取ったり、最後までできたりしたら、「すごいね」と一緒に喜びたくなりますよね。そのうえで、そこまでの工夫にも目を向けてみると、子ども自身が「何がうまくいったのか」に気づきやすくなります。
「難しいところで、やり方を変えていたね」
「分からないって自分から聞けたね」
「少し休んでから、もう一度戻ってきたんだね」
「自分ではどうだった?」「次にも使えそうな方法はあった?」と聞くと、子どもが自分の経験を振り返るきっかけになります。自分の工夫とできたことがつながると、「次もやれそう」という見通しが生まれることがあります。
ここでいう過程は、長く頑張ったことだけではありません。方法を変えたこと。助けを求めたこと。無理をせず休んだこと。どれも、その子が自分に合う進み方を探した大切な経験です。
「頭がいいね」のように能力を評価するだけでなく、具体的な行動や工夫にも目を向けることは、次の挑戦を支えるフィードバックになります。(※4・5)間違いを直したり、必要なやり方を教えたりするときも、その子自身を評価するのではなく、「次はどうするとよさそうか」を一緒に考えられるとよいですね。
5.失敗しても、休んだりもう一度試したりできる環境をつくる
何かに挑戦すれば、思ったようにできないこともあります。そんなとき、親としては「次はこうすればいいよ」「失敗も勉強だよ」と、早く前向きにしてあげたくなるかもしれません。
でも、悔しさや恥ずかしさの中にいるときは、次の方法より先に、今の気持ちを分かってもらいたいこともあります。
「悔しかったのかな」
「今はもうやりたくない感じかな。違ったら教えてね」
少し落ち着いたら、
「次は何か変えてみたいことがある?」
「一緒に考える? 今日はここまでにする?」
と聞いてみます。
間違いを責められず、振り返って直せることは、学びにも役立つとされています。※7 家庭でも、うまくいかなかった気持ちを受け止めてもらい、次に変えられることを一緒に考えられると、もう一度試す道が残ります。
すぐに再挑戦することだけが、よい一歩ではありません。「今日は休む」「別の方法にする」「助けを求める」と自分で決めることも、その子なりの前進です。難しさが大きすぎるときは、課題や手助けの量を調整してあげてください。
子どもに任せることと、親が支えることは両立する
「子どもに決めてもらいたい。でも、朝の支度や宿題を全部本人任せにはできない」。そう感じるのは、とても自然なことです。
自己決定を尊重することは、何でも子どもに決めさせることではありません。親が決めることがあっても大丈夫です。その中で、子どもが決められる部分を少し残します。
大人が責任を持って決めること
- 安全や健康に関わること
- 学校や家庭生活上、動かせない期限
- 家族全員に関わる基本的な約束
親子で相談して決められること
- 取り組む順番や開始時刻
- どんな方法で行うか
- どこまで手伝うか
子ども本人のものとして大切にしたいこと
- 自分の気持ちや考え
- 選んだ理由
- 経験をどう受け止めたか
例えば、出発時刻は親が決めて伝えてかまいません。そのうえで、「着替えと歯みがき、どちらからにする?」「靴下は自分ではく? 一緒にする?」と聞けば、決まった予定の中にも子どもが選べる部分をつくれます。
待つことも、放っておくこととは違います。考えているようなら少し待つ。困って止まっているようなら、「どこを手伝おうか」と声をかける。親が近くで様子を見ながら、そのとき必要な支えを届けることも、子どもの力を大切にする関わりです。

年齢やそのときの状態に合わせて方法を調整する
ここからの年齢は、あくまで一つの目安です。同じ年齢でも、言葉で考えやすい子もいれば、実物を見たほうが分かりやすい子もいます。その日の疲れ具合でも変わります。年齢の数字より、目の前の子どもの様子を見ながら使ってみてください。
5〜6歳頃:短い言葉と分かりやすい選択肢を使う
長い説明より、二つほどの選択肢や実物、絵があると考えやすい時期です。「どこから片づける?」ではなく、箱を見せながら「ブロックと絵本、どちらからにする?」と聞く方法があります。一人で始めにくそうなら、大人も一緒に手を動かしてみましょう。
7〜9歳頃:手順を見えるようにし、自分で決める部分を広げる
することを一緒にリストにしたり、終わったところに印をつけたりすると、先の見通しが持ちやすくなります。順番、場所、手伝ってほしい部分など、小さなことから自分で決める経験を増やせます。
10〜11歳頃:方法や必要な助けを話し合う
大人が選択肢をすべて用意するだけでなく、「どんなやり方なら進めやすそう?」「何を手伝ってほしい?」と、一緒に考えてみます。親とは違う考えが出てきたら、まずその理由を聞いてみると、その子なりの見方が見えてくることもあります。
どの年齢でも、言葉で答えにくそうなときは、指さす、書く、あとで話すなど、その子が表しやすい方法を選べます。
5つの方法を試しても、すぐに動かないときは
方法を試しても、子どもがすぐに動くとは限りません。行動しなかったからといって、関わりが失敗だったとも限りません。
「今は疲れている」と気づいた。
「ここが分からない」と言えた。
「最初だけ手伝ってほしい」と頼めた。
「今日は休んで明日にする」と決めた。
こうしたことも、自分の状態を知り、必要なことを考える大切な変化です。
一方で、いつもと違う状態が続く、睡眠や食欲、登校、遊び、人との関わりにも変化がある、本人のつらさが強いといった場合には、家庭だけで抱えず、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、自治体の相談窓口、かかりつけの小児科などに相談してもよいでしょう。
まとめ|子どもの中の「やってみよう」が生まれる土台をつくろう
子どものやる気を引き出すために、親ができることは次の5つです。
- 動かす前に、今の状態や気持ちを確かめる
- 子どもが自分で決められる余地をつくる
- 最初の一歩を具体的にし、必要な分だけ手伝う
- 結果だけで判断せず、過程や工夫にも関心を向ける
- 失敗しても、休んだりもう一度試したりできる環境をつくる
毎回、全部できなくても大丈夫です。今日ひとつ、「この子はいま、どんな感じかな」と様子を見てみる。そこから始めてみてください。
子どもの中にある「やってみよう」を急いで引き出すのではなく、その気持ちが生まれやすい土台をつくる。親が必要なときに方向を示し、手を貸すことも、その土台の一つです。親子に合う関わり方を、少しずつ見つけていけたらよいですね。
子どもの「話してみたい」を支える、キッズメイトの「おはなしの時間」
子どもは、話しているうちに、「自分はこんなふうに感じていたんだ」「本当はこうしたかったんだ」と、自分の気持ちや考えに気づくことがあります。好きなことや今日あったことを話す時間も、その子が自分の言葉を見つけていく大切な時間です。
でも、毎日の生活の中で、子どもが思う存分話し、大人がじっくり聴く時間をつくるのは簡単ではありません。家事や仕事に追われる日もありますし、親子だからこそ、先に答えやアドバイスが浮かぶこともあります。

だからキッズメイト(KidsMate)には、子どもが思う存分話せる「おはなしの時間」があります。
おはなしコーチは、その時間、その子の話に100%の関心を向けます。評価やアドバイスを急がず、「この子はいま、何を感じているのだろう」と、まずその子を理解しようとします。
好きなことを夢中で話すうちに、気持ちが言葉になっていく。自分なりの答えが見えて、「こうしてみようかな」と思うこともある。コーチは先生や評価者ではなく、一緒に笑い、喜び、その子なりの一歩を応援するミカタです。
「家族とはまた違う大人にも、わが子の話を思う存分聴いてほしい」と感じた方は、キッズメイトの無料体験をご覧ください。
よくある質問
子どもに選択肢を出しても、選ばないときはどうすればよいですか?
選択肢が多かったり、疲れていて考える余裕がなかったりするのかもしれません。候補を二つほどに減らす、実物を見せる、少し時間を置くなどしてみましょう。「今は決められない」日には、親が「今日はこうしてみる?」と提案し、子どもの反応を見る方法もあります。
待っていても動かないとき、親はどこまで手伝ってよいですか?
最初の一歩を示す、一緒に始める、見本を見せるなど、必要な手助けをしてかまいません。「最初だけ一緒にする?」「どこを手伝ってほしい?」と確かめ、子どもの様子を見ながら、一人で進められる部分を少しずつ広げていきます。
手伝うと、子どもの自立を妨げませんか?
適切な手助けは、子どもが自分で進むための足場になります。何でも代わりにするのではなく、今できる部分と、手助けがあればできる部分を見ながら調整してみてください。一人で全部することだけでなく、必要なときに助けを求められることも大切な力です。
褒めることやご褒美は、やる気のためによくないのでしょうか?
褒めたり、できたことを一緒に喜んだりすることが、すべてよくないわけではありません。ご褒美が、その場で行動する理由になることもあります。
そのうえで、本人が何を工夫したか、やってみてどう感じたかにも関心を向けてみましょう。特にもともと好きな活動で、予告したご褒美を条件として繰り返すと、活動そのものへの関心を弱める可能性が指摘されています。※6
宿題や朝の準備など、子どもに任せきれないことはどうすればよいですか?
期限、安全、健康などに関わることは、大人が決めてかまいません。その中で、順番、場所、方法、手伝いの内容など、本人が選べる部分を探します。「必ずすること」と「自分で決められること」を分けると、親も子どもも考えやすくなります。
何歳頃から、自分で決めさせるとよいですか?
小さいうちから、二つの実物から選ぶなど、その子に分かりやすい小さな選択をつくれます。年齢が上がれば、方法や必要な手助けそのものを一緒に考えられます。年齢は目安として、その日の疲れや話しやすさにも合わせてみてください。
本記事で参考にした資料
※1 Patall, E. A., Cooper, H., & Robinson, J. C.「選択が内発的動機づけなどに与える影響に関するメタ分析」Psychological Bulletin(2008年)
※2 Mammadov, S., & Schroeder, K.「自律性を支える関わりと学習成果の関連に関するメタ分析」Contemporary Educational Psychology(2023年)
※3 Bandura, A., & Schunk, D. H.「身近な目標設定と、子どもの有能感・自己効力感・内発的関心に関する研究」Journal of Personality and Social Psychology(1981年)
※4 Mueller, C. M., & Dweck, C. S.「知能を褒めることが子どもの動機づけや成績に与える影響」Journal of Personality and Social Psychology(1998年)
※5 Wisniewski, B., Zierer, K., & Hattie, J.「教育におけるフィードバックの効果に関するメタ分析」Frontiers in Psychology(2020年)
※6 Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M.「外的報酬が内発的動機づけに与える影響に関するメタ分析」Psychological Bulletin(1999年)
※7 Metcalfe, J.「間違いから学ぶことに関する研究レビュー」Annual Review of Psychology(2017年)